先日、親しい友から、彼女が遭遇しているという、壮絶な社内イジメの実態を聞く機会があった。
日本では、とかく会社内でイジメられたという話を、よく耳にする。
ちなみに、イジメの英語は”bullying“。
“bullying” ⇒イジメの直訳。でも、いわゆる「いじめ」は、カタカナで書くことが多いことからもわかるように、正式なコトバではない。このbullyingという単語も、元々は学校でA子がB子にするいじめというニュアンス。
だから、社内イジメは、”workplace bullying“と言ったりもするが、どちらかというと、
“workplace harassment” = 職場の嫌がらせ
“unfair treatment at work” = 職場での不公平な扱い
ということが多い。
かくいう私も、決して他人事にはできないくらい、あらゆる層からのイジメを体験してきた。新入社員でも、ベテラン社員でも、年齢がどんなに若くても、経験がどんなに豊富でも、イジメは発生する。職場の男女比率、年齢比率、業種、職種を問わない。
正社員のときに、ベテラン派遣女性のイジメに耐えられなくて、上司のマネジャーに泣きついたこともある。
もちろん、外国でも(といっても、これまでの企業は、アメリカ系、ヨーロッパ系が多かったので、メガ企業を算出している先進国に限られるが)、イジメは日常茶飯事。決して、日本だけの産物ではない。
だけど、海外の職場イジメと、日本の職場イジメでは、根本的に異なる要素が、3つある。
1)日本のいじめは、「異質排除」の心理が水面下で働いている。
異質排除 = exclusion of different types of people
日本の、団体と同じように行動しようという社会風土は、恐らく他の大勢から気に入られないとやっていけないくらい土地が狭かったことにも原因がある。
そのため、「いじめられる人に対する集合的な関係性攻撃」が、海外より顕著に出る(金網;2015*)。
* 金綱知征。日英比較研究からみた日本のいじめの諸特徴。エモーション・スタディーズ 第1巻第 1 号 pp. 17─22(2015)。
つまり、「Aさんは、単純にBさんが嫌いだから、Bさんをイジメる」という構図が海外では多いのに対して、日本では「AさんとBさんは、会社にきて日が浅いCさんが会社のしきたりや社風をわからず、地雷を踏み続けることに嫌気が指し、だんだんうっとうしくなり、無視したり必要な書類を隠したりするようになった」というケースがかなり多い。
2)日本でのイジメの種類は、多種多様。
多種多様 = a variety of bullying types
上の一つ目に起因して、悪口やコトバでのイジメ、直接的な暴力など、外に発するタイプの攻撃タイプが海外では多いのに対し、日本ではこれらに加え、無視や人間関係から疎外させたりする関係性(間接的)攻撃が多い。
3)日本では、イジメを目撃したとき、止めに入る人が案外少ない。
これは、小さい子どものデータだが、「イジメを見たら、止めに入る」割合が、年齢が高くなるにつれ、海外は増加する。ところが、日本では、中学生くらいには低下する。理由は、「他の子たちに同調してイジメたいというホンネ」を「イジメはいけないというタテマエ」と区別するようになるから、のようだ。つまり、この「その場の空気を優先したい」というホンネは、日本では、幼少期から培われる。
イジメを止める = stop bullying
建前と本音 = principles and real intensions
そして、この本音と建前は、大人になるまでに、十分研ぎ澄まされてくる。だから、「正義は勝つ」みたいな思想は、案外日本では育たない。
巨大組織の悪に果敢に立ち向かうというハリウッド映画を、よく観るでしょ?あれが、日本映画では案外少ないと思うのは、私だけ?
私も、職場で、正統派の意見を言って、よく浮いた。それらの主張がまかり通るような会社が、日本でも増えるといいね。